おかやまDMネット(岡山県糖尿病対策専門会議)

SGLT2阻害薬カナグリフロジンが2型糖尿病患者の心血管イベントと腎イベントを抑制する可能性(CANVAS試験、CANVAS-R試験)

ADA(米国糖尿病学会)にて2017年6月12日、SGLT2阻害薬カナグリフロジン(カナグル®錠)が2型糖尿病患者の心血管イベント、腎イベントに与える影響を検討したCANVAS試験、CANVAS-R試験の主要結果が発表されました。CANVAS試験は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者10,142人を対象にカナグリフロジンの心血管アウトカムを検討したプラセボ対照無作為化二重盲検試験です(観察期間:平均3.1年)。主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中のいずれかの発現ですが、カナグリフロジン投与群でプラセボ群と比較してこれらの心血管リスクを有意に減少させました(ハザード比:0.86, p=0.02)。さらに、カナグリフロジン投与群では、アルブミン尿の進展が27%抑制され、腎複合エンドポイント(eGFR低下、腎代替療法の開始、腎疾患による死亡)において40%の抑制が認められました。

一方で、カナグリフロジン投与群では、下肢切断率(足趾あるいは中足骨レベルでの切断)がプラセボ群の1.97倍と下肢切断リスクの上昇を認めました。この結果を受けて去る5月18日に米国食品医薬品局(FDA)から、カナグリフロジン使用の際には、下肢切断・足潰瘍の既往、末梢動脈疾患(PAD)、神経障害の有無を確認し、足病変ハイリスク患者のスクリーニングを行い、カナグリフロジン投与中の患者に下肢感染の徴候や足潰瘍を認めた場合は投薬を中止すべきとの安全情報が出されています。

2015年9月に発表されたEMPA-REG OUTCOME試験(エンパグリフロジン、ジャディアンス®錠)に続いて、SGLT2阻害薬が心血管イベントを低減する可能性を示した試験でしたが、同時に下肢切断リスクの可能性も示唆された試験でもあり、今後、足病変ハイリスク患者に投与する際はFDAの安全情報を念頭に置く必要があるかもしれません。

N Engl J Med. 2017 June 12. DOI: 10.1056/NEJMoa1611925 [Epub ahead of print] http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1611925#t=article

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