GLP-1受容体作動薬リラグルチドが2型糖尿病患者の心血管リスクを低減する可能性(LEADER試験)
ADA(米国糖尿病学会)にて、2型糖尿病患者の標準治療にGLP-1受容体作動薬リラグルチド(ビクトーザ®)を上乗せした場合の心血管イベントに与える影響を検討したLEADER試験の主要結果が発表されました。LEADER試験は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者9,340例を対象にリラグルチドの心血管アウトカムを検討したプラセボ対照無作為化二重盲検試験です(観察期間中央値:3.8年)。リラグルチド群には、標準的な糖尿病治療に上乗せしてリラグルチド1.8mg(または最大耐用量)が投与されました。
主要評価項目は、心血管死、非致死性心筋梗塞または非致死的脳卒中の最初の発生とされましたが、リラグルチド群ではプラセボ群と比較して主要複合アウトカムの発生率を有意に減少させました(ハザード比:0.87, p<0.001)。また、心血管死、全死亡もリラグルチド群で有意に低下していました(各々p=0.007, p=0.02)。非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全による入院については、有意差は認められませんでした。
HbA1c値はリラグルチド群で有意に低く推移しましたが(36ヵ月の時点で平均 -0.40%)、低血糖の発生率はプラセボ群で多い傾向を認め(p=0.06)、体重もリラグルチド群で有意に大きな体重減少(群間差2.3kg)を認めました。収縮期血圧はリラグルチド群で有意に低く(-1.2mmHg)、拡張期血圧はリラグルチド群で有意に高い(+0.6mmHg)という結果でした。
有害事象は、消化器症状、急性胆石症はリラグルチド群で有意に高く、また、膵癌もリラグルチド群で高い傾向にありました(13名(0.3%) vs. 5名(0.1%)、p=0.06)。
昨年9月に発表されたEMPA-REG OUTCOME試験(エンパグリフロジン(ジャディアンス®錠))に続いて、インクレチン関連薬としては初めて心血管リスクの減少を示した試験として注目されます。1.8mgという投与量はわが国の投与量(0.9mg)の倍ではありますが、体重減少と低血糖頻度の減少(傾向)を維持しながら血糖コントロールを改善させたことは本試験の大きな特徴と考えられ、これらがアウトカムに与えた影響について、今後のさらなる解析が待たれます。
N Engl J Med. 2016 Jun 13. [Epub ahead of print] http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1603827#t=article