おかやまDMネット(岡山県糖尿病対策専門会議)

2型糖尿病患者において、肥満外科手術の長期成績が示されました

2型糖尿病患者において肥満外科手術と内科的治療を比較した長期のランダム化比較研究の報告は数少ないですが、この度、STAMPEDE試験の5年間の解析結果が示されました。

この研究は、BMI 27~43の2型糖尿病患者150名を対象として、①内科的強化療法単独群あるいは内科的強化療法+肥満外科手術(②Roux-en-Y胃バイパス術群、③スリーブ胃切除術群)の3群に無作為に割り付け、主要評価項目を経口糖尿病薬あり、あるいは経口糖尿病薬なしでのHbA1c値6.0%以下の達成率として前向きに検討した試験です。

134例(平均49±8歳、HbA1c 9.2±1.5%、BMI 37±3.5;ベースライン)が試験を完遂しましたが、5年後の主要評価項目達成率は、内科的強化療法単独群では5%であったのに対して、胃バイパス術群では29%(調整後 p=0.03)、スリーブ胃切除術群では23%(調整後 p=0.07)でした。また、ベースラインと比較したHbA1c値の低下は肥満外科手術を受けた患者では‐2.1%で、内科的治療群の-0.3%と比較して著明に低下しました(p=0.003)。

胃バイパス術群、スリーブ胃切除術群、内科的治療群で比較した各々の評価指標では、体重はそれぞれ-23%、-19%、-5%、トリグリセライド値は-40%、-29%、-8%、 HDL-C値は-32%、-30%、-7%、インスリン使用は-35%、-34%、-13%と、肥満外科手術施行群で有意な改善が認められました。

本研究は、肥満を有する2型糖尿病患者における肥満外科手術の長期成績を示したものですが、昨年末に米国糖尿病学会から発表された「糖尿病の標準治療ガイドライン2017」においても、肥満を有する糖尿病患者に対する治療選択肢として糖尿病外科手術(Metabolic Surgery)が明記されており、日本ではまだ多くありませんが、今後ますます注目される治療法です。

※2014年4月から本邦でも肥満手術(腹腔鏡下胃スリーブ状切除術)が保険適応となりました。保険診療の算定要件は、「6か月以上の内科的治療によっても十分な効果が得られないBMI 35 kg/m2以上の患者で、糖尿病、高血圧症又は脂質異常症のうち1つ以上を合併している患者に対して腹腔鏡下にスリーブ状胃切除術を実施した場合に限り算定する」とされており、施設基準として「術者として10例以上の実績を有すること」などの基準が設けられています。

20170227

N Engl J Med 2017; 376:641-651
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1600869?query=featured_home

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