Closed-loopシステムのインスリンポンプ療法はSAP (sensor-augmented pump)療法と比較して、1型糖尿病患者の日常生活(3か月間)において有効性を発揮
SAP (sensor-augmented pump)療法(=センサー付きポンプ療法)は、現在日本でも使用されていますが、CGM(持続血糖モニタ)センサーから送られてくるグルコース値をインスリンポンプ本体で受信し、連続的なグルコース値の変化をリアルタイムで見ることが出来るシステムです。これに対してClosed-loopシステムとは、CGMセンサーから送られてくる情報に応じて、インスリンポンプの注入速度を自動的に増減するシステムで、この論文では「Artificial Beta Cell (人工膵ベータ細胞)」と表現しています。
この研究は、2つの多施設無作為化クロスオーバー試験でClosed-loopシステムとSAP療法を比較したもので、33名の成人(40.0±9.4歳)と25名の小児・思春期(12.0±3.1歳)の患者が参加し、Closed-loopシステムとSAP療法をそれぞれ12週間施行されました。
成人において、Closed-loopシステム群ではSAP療法群と比較して1日の中でグルコース値が目標範囲内であった時間の割合は11.0ポイント高く(p<0.001)、平均グルコース値と平均HbA1c値はそれぞれ有意に低値を示しました(それぞれp<0.001, p=0.002)。さらに、グルコース値63mg/dl以下の曲線下面積(AUC)は、Closed-loopシステム群で39%低いという結果でした(p<0.001)。
小児思春期の患者においては、Closed-loopシステム群ではSAP療法群と比較して夜間のグルコース値が目標範囲内であった時間の割合が高く(p<0.001)、夜間の平均グルコース値が有意に低値を示しました(p<0.001)。グルコース値63mg/dl以下の曲線下面積(AUC)は、Closed-loopシステム群でSAP療法群と比較して42%低いという結果でした(p=0.03)。
この研究から、1型糖尿病患者の12週間におけるClosed-loopシステムの使用において、SAP療法と比較して血糖コントロールを改善し低血糖を減少させることが示されました。また、成人においてはClosed-loopシステムの使用でSAP療法と比較してHbA1c値をより低下させることが示されました。今までもClosed-loopシステムの有用性は比較的短期間の研究では指摘されてきましたが、今回、より長期の3か月間の日常生活での使用にてその有用性が示されたことは、意義深い結果と言えます。
N Engl J Med. 2015 Sep 17. [Epub ahead of print] (http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1509351)