週1回皮下注射製剤のGLP-1受容体作動薬セマグルチドが2型糖尿病患者の心血管リスクを低減する可能性(SUSTAIN-6試験)
EASD(欧州糖尿病学会)にて、2型糖尿病患者の標準治療に週1回製剤のGLP-1受容体作動薬セマグルチドを追加投与して心血管イベントに与える影響を検討したSUSTAIN-6試験の結果が発表されました。SUSTAIN-6試験は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者3,297名を対象にセマグルチドの心血管アウトカムを検討したプラセボ対照無作為化二重盲検試験です。セマグルチド群には、標準的な糖尿病治療に上乗せしてセマグルチド0.5mgまたは1.0mg(週1回)が投与され、104週間の治療を受けました。
主要評価項目は、心血管死、非致死性心筋梗塞または非致死的脳卒中の最初の発現までの時間とされましたが、セマグルチド群ではプラセボ群と比較して主要複合アウトカムの発生率を26%有意に減少させました(ハザード比:0.74, 95%CI: 0.58~0.95, 非劣のp<0.001, 優越性のp=0.02)。個々の評価項目では、非致死性脳卒中はセマグルチド群で有意に低下していましたが(p=0.04)、非致死性心筋梗塞と心血管死については、有意差は認められませんでした。
HbA1c値はセマグルチド群で有意に低く推移し(ベースラインの平均HbA1c 8.7% .104週の時点で、プラセボ:-0.4%, セマグルチド0.5mg: -1.1%, セマグルチド1.0mg: -1.4%)、体重もセマグルチド群で有意に減少させました(ベースラインの平均体重92.1kg. プラセボ0.5mg:-0.7kg, プラセボ1.0mg:-0.5kg, セマグルチド0.5mg: -3.6kg, セマグルチド1.0mg: -4.9kg)。
また、腎症の新規発症率、悪化率はともにセマグルチド群でプラセボ群と比較して有意に低いことが示されました(3.8% vs. 6.1 %, ハザード比:0.64, 95%CI: 0.46~0.88, p=0.005)。一方で、網膜症に関連した合併症の発生率は、プラセボ群と比較してセマグルチド群で有意に多く認められました(3.0% vs. 1.8%, ハザード比:1.76, 95%CI : 1.11~2.78、P=0.02)。
重篤な有害事象はプラセボ群に比べてセマグルチド群で少なかったものの、有害事象による投与中止(主に胃腸障害による)はセマグルチド群で多い結果となりました。
セマグルチドは、まだ世界で発売されていない新規の週1回タイプのGLP-1受容体作動薬で、日本では第3相試験が行われています。GLP-1受容体作動薬は、短時間作用型の方が消化器症状や食欲抑制作用が強く、体重減少も大きい印象がありますが、今回の報告でセマグルチドが -3.6kg~-4.9kgという著明な体重減少を示したことは興味深い結果です。
糖尿病治療薬では、今までにSGLT2阻害薬のエンパグリフロジン(EMPA-REG OUTCOME試験、DONATS 2015/9/29に掲載)とGLP-1受容体作動薬のリラグルチド(LEADER試験、DONATS 2016/6/27に掲載)が心血管イベントを抑制するデータを示してきましたが、今回のSUSTAIN-6試験は、これに続いて糖尿病薬で心血管イベント抑制効果を示した試験として注目されます。
N Engl J Med. 2016 Sep 16. [Epub ahead of print]http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1607141