小児思春期、若年1型糖尿病患者において、インスリンポンプ療法は重症低血糖と糖尿病性ケトアシドーシスを有意に抑制
欧米では1型糖尿病患者の約半数がインスリンポンプ療法を受けており、日本でも年々増加傾向ですが、インスリンポンプ療法における懸念材料のひとつが、ルート閉塞によりインスリン注入が遮断され糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こす恐れがあることです。この研究では、若年1型糖尿病において、重症低血糖と糖尿病性ケトアシドーシスの発症頻度をインスリンポンプ療法と注射療法で比較しました。
この研究は2011年から2015年にかけて、ドイツ、オーストリア、ルクセンブルグの446施設の糖尿病センターで、20歳未満で罹病期間が1年以上の1型糖尿病患者を対象に行われた、集団ベースの前向きコホート研究です。主要評価項目は、直近の治療年間における重症低血糖と糖尿病性ケトアシドーシスの頻度で、副次評価項目はHbA1c値、インスリン投与量、BMIとしました。
3万579名(平均14.1歳、男性53%)のうち、1万4,119名がインスリンポンプ療法(期間中央値:3.7年)、1万6,460名が注射療法(期間中央値:3.6年)を受けていました。年齢、性別、罹病期間、出生地、HbA1c値、BMIでマッチングしたインスリンポンプ療法9,814名と注射療法9,814名で比較検討されましたが、ポンプ療法は注射療法と比較して重症低血糖、糖尿病性ケトアシドーシスともその発現頻度が有意に低いという結果でした(重症低血糖:9.55 vs. 13.97 対100人年, p<0.001. 糖尿病性ケトアシドーシス:3.64 vs. 4.26 対100人年, p=0.04)。HbA1c値はポンプ療法群で注射療法と比較して有意に低く(8.04% vs. 8.22%, P<0.001)、インスリン総投与量はポンプ療法群で注射療法と比較して有意に少ない(0.84単位/kg vs. 0.98単位/kg, p<0.001)という結果でした。また、BMIは両群間で有意差は認められませんでした。
本研究は、小児思春期、若年の1型糖尿病患者の直近の治療において、注射療法と比較してインスリンポンプ療法が重症低血糖と糖尿病性ケトアシドーシスを減らしながら、より良い血糖コントロールを達成していることを示しました。
JAMA. 2017 Oct 10;318(14):1358-1366.
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2656808