デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬(tirzepatide)が2型糖尿病患者を対象とした第3相試験で主要評価項目を達成しました
tirzepatideは、グルコース依存性インスリン刺激性ポリペプチド(GIP)とGLP-1の両インクレチンの作用を単一分子に統合した新規の週1回投与デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬です。GIPは、GLP-1受容体作動薬の効果を補完するホルモンです。前臨床モデルにおいて、GIPは食物摂取量を減少させエネルギー消費を増加させることが示されているため、体重の減少をもたらすと考えられます。また、GLP-1受容体作動薬と併用することでグルコースと体重に対してより大きな効果をもたらす可能性があると考えられ、海外で臨床試験が行われています。
今回、tirzepatideの有効性と安全性を評価した国際試験であるSURPASS-1、SURPASS-2、SURPASS-3、SURPASS-5の結果が、6月25日~29日に開催された第81回米国糖尿病学会学術集会で発表され、同時にSURPASS-1はLancetに、SURPASS-2はNew England Journal of Medicineに掲載されました。
各SURPASS試験は、2型糖尿病の治療としてのtirzepatideの可能性について検証できるよう設計されており、SURPASS-1は、2型糖尿病患者を対象に、プラセボに対する単剤療法としてのtirzepatideの3つの用量(5mg、10mg、15mg)の有効性と安全性について評価されました。SURPASS-2とSURPASS-3では3つの用量のtirzepatideの有効性と安全性をそれぞれセマグルチド1mg週1回注射、インスリングラルギン注射と比較し、そしてSURPASS-5では、プラセボと比較して、インスリングラルギンに追加した場合のtirzepatideの有効性と安全性を評価しました。
いずれの試験においてtirzepatideは有効性推定の主要および副次的評価項目を達成し、2型糖尿病患者の持続的なHbA1c低下と体重減少により、安全性と有効性を示しました。
・SURPAS-1:3つの用量すべてにおいて、プラセボと比較し、有意なHbA1c低下と体重減少を示しました。tirzepatideが投与された患者の最大92%がHbA1c 7%未満を達成し、最大52%の患者はHbA1c 5.7%未満を達成しました。
・SURPASS-2:3つの用量すべてにおいて、セマグルチド注射群と比較し、優れたHbA1c低下と体重減少をもたらしました。tirzepatideが投与された患者の最大92%がHbA1c 7%未満を達成し、最大51%の患者はHbA1c 5.7%未満を達成しました。
・SURPASS-3:3つの用量すべてにおいて、インスリングラルギン群と比較し、優れたHbA1c低下と体重減少をもたらしました。tirzepatideが投与された患者の最大93%がHbA1c 7%未満を達成し、最大48%の患者はHbA1c 5.7%未満を達成しました。
・SURPASS-5:3つの用量すべてにおいて、インスリングラルギンにプラセボを追加した群と比較し、優れたHbA1c低下と体重減少をもたらしました。tirzepatideが投与された患者の最大97%がHbA1c 7%未満を達成し、最大62%の患者はHbA1c 5.7%未満を達成しました。
現在、わが国ではインクレチン製剤(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)が広く使用されていますが、デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬の開発により、2型糖尿病の治療の幅がさらに広がる可能性があります。
【情報元】
Latest Data From SURPASS Trials Demonstrate Tirzepatide Provided Meaningful Blood Sugar Reductions | ADA (diabetes.org) (米国糖尿病学会プレスリリース2021.6.29)
ランセット誌、チルゼパチドがプラセボに対し成人2型糖尿病患者のHbA1cおよび体重減少に優越性を示したリリーのSURPASS-1試験結果を掲載(日本イーライリリー株式会社プレスリリース2021.7.6)
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌 チルゼパチドがセマグルチド注射薬に対し成人2型糖尿病患者のHbA1cおよび体重減少に優越性を示したリリーのSURPASS-2試験結果を掲載(日本イーライリリー株式会社プレスリリース2021.7.6)